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数日後、僕は例のお礼で、校門を出てすぐの中華系カフェでトモとキッカにタピオカとラーメンを奢っていた。
「で、結局、上手くいった? 私、ヤスユキ先輩にたくさん質問できてすごく良かった! めっちゃ優しく教えてくれたし。ファンになりそう!」
キッカがどうだったかを尋ねてくる。
「優しかったか? 俺にはイライラしてたぞっ?」
トモはたれ目で優しい一重の目を大きく見開いて反対意見を言った。
「だってトモさ、明らかに取ってつけた質問だったもの」
「いーや、あれは男に冷たい人!」
「マシロと同じサークルでした、とか言うからよ」
「地雷踏んだかなあ」
「だね」
二人の話を聞いていると、ヤスユキ先輩はマシロの事になると過剰に反応するようだ。僕からも結果を話す。
「はー? 殴られたあ⁈」
二人は声を合わせて同じことを言う。思わず笑ってしまった。
「だから眼鏡じゃなくてコンタクトにしてんのか」
「そう。眼鏡は修理に出してる」
「でも、ノゾムって意外とイケメンなんだねえ。私知らなかった」
キッカがまじまじと僕を見てくる。
「恥ずかしいから止めてよ」
「キッカ、さっきからヤスユキ先輩とかノゾムとかさあ。じゃあ俺は? ね??」
トモがキッカに小首を傾げて可愛い顔をしてみせた。トモはマッシュルームカットでふんわりした雰囲気で、年上の女性に人気がある。
「はーい、かわいいかわいい」
棒読みでキッカがタピオカドリンクをストローで啜った。
「キッカ、覚えてろよぉ~」
「いいじゃん、トモも案外モテるんだから、一人ぐらいいなくたって」
「ほんとキッカ姐さんひどい事言うんだもんなあ~」
「姐さん言うけど、私同い年だからね? 全くもう……」
あれ? トモ、もしかして、キッカの事……? じっとトモを見ると、僕の視線に気づいた彼は少しだけ頬を赤らめた。
僕の友達はシャラシャラと音がするような長いピアスが似合う。女の子よりも可愛らしい時があるのに、ダンスはしなやかで美しく、いつも高評価をもらっているすごい奴だ。モテるのに彼女作らないと思ってたら、こんなとこに本命がいたのか。
「そうだ、今夜ノゾム暇なんだろ? 友達の兄貴のDJんとこ行ってみようよ」
「ん?」
「ほら、例の噂、確認しに行こうぜ」
TK先生のアングララッパーの噂か。僕は別に興味ないんだけどな。でもまあ、気分転換にいいかもしれない。どうせ、マシロがいなければ課題は進まないのだ。
「じゃあ、ご飯食べてから行こう。街の中のジンカフェに19時で」
「おっけ、じゃあジンカフェその3で!」
ジンカフェというのは大学の近くにある喫茶店で、学生のお腹を満たし溜まり場になってくれているありがたい場所で、ここの学生なら皆一度は行ったことがある。もう一つ美味しいコーヒーを出すドリンク中心の二号店が別の校門の側にあり、その3というのは、最近街中に出店した三号店だ。夜遊びをするうちの学生は、ジンカフェその3で待ち合わせと腹ごしらえをして繰り出すことが多い。味がわかっているから安心するしボリュームもあるから、僕らもよくそれに倣う。
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