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翌る朝から行われた和議の末、大国主は国譲りを認めた。
彼は国長の座を降り、倅らと共に杵築に隠遁。反大和の残党は布津と稲生に鏖にされた。隣の出雲の支配下にあった吉備国も無血で降伏し、まもなく讃岐国と並び製塩業などで大和を支えた。
「倅は本当に図太くなりました。よもや貴女を諫めるなど、死にたいのかと思いました」
中つ国平定の最中、阿宜は呆れ果てた様で言う。
二人の前には、各々の愛馬たちが並んでいる。特に百襲姫の愛馬は、栗毛から葦毛に生え変わっていた。戦の後始末はまだ済んでいないが、戦勝の立役者たる馬たちをまず労わねばならない。
此度の戦で、二頭死んだ。彼らに報いねばという使命感が、百襲姫にもあった。
「中つ国、馬たちの広い庭を得た。阿巳も強くなった。私が結ばせたあの日の約束は、全て果たされた。ひとまず満足したわ」
姫は満足げに微笑む。あの飢えた狼のような笑顔でなく、太陽のような愛に満ちた笑顔である。女神を見たと、阿宜は思った。
「では、次はどうされますか? とりあえず大和に帰りましょうか」
そう言うと彼女は首を横に振る。
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