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「姫さま、どうかお下げください。そのような得恐ろしいものに触れるなど、もってのほかですぞ」
すると少女は拗ねたように頬を膨らませた。
「だってこの子は私たちの大事な馬の友達になるかもしれないでしょう。仲良くしたいと思うのは当然のことじゃない」
彼女は愛馬に甲虫を差し出すと、大きな鼻がすんすんとお腹を嗅いでいる。強者の余裕というやつか噛むこともなく、ただ撫でるように舐めていた。
「それにしてもなんて大きさなのかしら。これだけ大きいのだから、逞しい種を宿しているはずよ。帰ったら、一番大きな雌と番わせましょう。きっととても強い子が生まれるわ」
百襲姫は目を輝かせ、甲虫の背中に唇を落とした。
甲虫は身を捩らせて逃れようとするものの、少女は構わず、長い脚の一本を指先で掴んで持ち上げた。そしてそれを自分の頭上に持ち上げ、じっくりと眺めている。まるで遊び物を扱うような仕草に、布津たちは息を呑んだ。
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