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窓辺のチィが、うるさい父の声にうんざりして、キッチンの方へ去って行った。
私はその後姿を見送りながら、猫は本当に自由でいいなあと思った。
型に嵌めようとする父と、決して型には嵌まらない兄の差は埋めようもなく、二人が理解し合える未来はきっと訪れない。まあ、父はこの先に多額の慰謝料を払うことになるし、不倫している女とも切れるだろうからどうでもいいのだけど。
家庭をないがしろにして自分の理想ばかり押しつけてきた男の末路よりも、兄の未来の方が何倍も大事だ。
この話し合いは、まだ続く。
でも動かない事実は、今日、わざと試験に兄が落ちてきた、ということ。
ああ、父の説教は耳触りが悪い。
こんな時間、早く終わらないかなあ……。
(了)
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