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次の日 自転車で校門前を通りかかると駅から来る多くの学生達とすれ違った。
女子生徒の制服はあの少女が着ていた物と違った様な気もしたが昨夜の事は夢でも幻覚でもないリアルな体験だったと思った。
それにあの少女の困り顔も少しはにかんだ微笑みもしっかりと覚えている。
注意深く見渡しながら探してみたが少女を見付ける事は出来ずに駅の駐輪場へ着いた。
それから一週間位は注意して探したが結局見付けられずその内に探すのを止めてしまった。
少女と再会したのは春が過ぎ梅雨の季節でシトシトと雨が降る日が続いていた夜だった。
霧雨舞うその夜も残業で遅くなり傘をさそうかどうか迷いながらアパートへ急いでいた。
あの校門の街灯が見えると何だか早歩きになった。
すると突然 校門からあの少女がすっと出て来た。
街灯に照らされた少女は僕を待っていたかのように微笑んでいた。
「やっと会えた」
少女はホッとした様子だった。
「えっ!
僕を待ってたの?」
「うん
随分待ってたんだから」
「どうして僕を待つの?」
「さあ
分かんないけど...」
「お腹空いてる?」
「うんん
どうしてそんな事聞くの?」
「だって前に会った時お腹空いてたじゃん
忘れた?
お弁当あげたの...」
「そんな事より行こうよ」
「えっ
何処に?」
「帰るの」
「あぁ
迎えは来ないの」
「誰も来ない」
「そうなんだ
家はどっち?」
「兄さんと同じ方向」
「ふ~ん...
じゃぁ
行こうか」
僕達は霧雨の中歩き出した。
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