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僕の右側を歩く少女は当たり前の様に付いて来た。 何か話さなければならないのに言葉が見つからない。 「変な子だって思ってるでしょ?」 少女は脇腹辺りを擦りながら尋ねた。 「うん... いやいやそんな事ないけど... 不思議な感じかな」 「良かった」 「何が?」 「あそこから出られて」 「あそこって...」 「校門だよ」 「誰でも出れるじゃない」 「ウチは出れなかったの」 「どうして?」 「だって あのガス灯が... …あっ着いたね」 僕達はいつの間にかアパートの前に辿り着いていた。 「えっ どうして僕のアパート知ってるの?」 「だって私の家ここだもん」 「えっ! そうなんだ 僕は二階に住んでる 君は?」 「教えない」 「えええっ まぁいいけど…」 僕達は暫く霧雨の中佇んでいた。 僕はふと我に返り、 「じゃぁ」 そう言って階段を上がり始めた。 「ありがとう」 後ろから声がして振り返ると少女の姿はなかった。 そしてあの娘に傘を貸したままだった事を思い出した。 翌朝家を出る時管理人さんが道を掃いていた。 「おはようございます このアパートって家族も住んでるんですね」 「えっ 家族は狭くて住めないし今は夫婦も住んでないね 全部同じ間取りだからね 分かるよね」 「ええ 確かに家族では狭すぎる」 親子2人で住んでいるのだろうか。 僕はそう思いながら駅へ向かった。 しかしどうにも気になって仕事をしていても少女の事を思い浮かべてしまう。 いよいよ我慢出来ず休みの日に管理人へ聞きに行った。 もちろん詳しくは教えてくれなかったが中学生くらいの少女は住んでいない事だけははっきりした。 じゃ あの少女は一体… 嘘を付かれる程 僕は信用されて無かったのかと悲しくなってしまった。
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