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それから夢を見たのは数日後だった。 あの少女が街灯の下で座り込んで泣いている 僕はその子の肩に手をやり囁いた。 「もうここに居なくても良いんだ 君はあの日僕と一緒だった このガス灯の下で… あれからどれだけの時間 僕の事待ってたんだ もう終わってしまった事なのに…」 僕は泣きながら目覚めた。 意味なんか分からなくても記憶の何処かにあの少女がいる事を確信した。 直ぐに街灯へ向かった。 今までそれ程注意して眺めた事の無かった街灯をしげしげと観察した。 小振りながらも四角形のモダンな作りは時代を感じさせた。 間違いなく現代の街灯ではなかった。 何度となくここを行き交い ただ夜道を照らすだけの灯りだとばかり思っていたが どうやらこれには歴史が刻み込まれている様に感じた。 そしてふと校門の中に目をやると僕があの日少女に渡した傘が立て掛けてあった。 僕は不動産屋へ行き街灯の事を尋ねてみたが西口駅前の再開発で入って来た新しい店で誰も知らなかった。 ただ店長が東口には古い不動産屋が一軒だけある事を教えてくれた。 早速行ってみると古びた二階建てのビルの一階に辛うじて不動産の文字が伺える店があった。 僕は意を決して扉を叩いた。 「御免下さい」 何度か呼んでいる内に中から咳払いが聞こえ扉が開いた。 「すみません… ちょっとお聞きしたい…」 「ああっ…? 九十五になって耳が遠くてよく分からんが今は土地の仕事はしてないんじゃ すまんが他を当たってくれまいか」 お爺さんは耳をこちらに向けたまま野太い声で唸った。
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