<32・Birthday>

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「まだ、悪魔は完全に呼び出されていない。なら打つ手はあるはず。やるべきことは三つだ。一つ目、悪魔の断片が一部でもこの世界に入り込んできたら、片っ端から追い返すこと。アルバトロの規模だと、指や髪といった、体の一部分から少しずつこの世界に呼びこまれていく可能性が高い。そいつを見つけたら、片っ端から魔法で叩いて追い返す」 「できるのか、そんなこと」 「もちろん、怯ませて一時的に引っ込めるくらいの効果しかないだろう。あくまでそれは一時しのぎだ。そして、一時しのぎをしているうちに……二つ目、召喚の魔方陣を壊す方法を考える」  説明している間にも、グラウンド中にシャドウステップの群れがわらわらと溢れ始めている。今まで見たのと同じように、ぐるぐると無作為に回ったり、転がったり、走り回ったりとやりたい放題だ。あれら全てが魔方陣を形成する一部だと思うと実にうんざりさせられる。 「シャドウステップ本体を攻撃するのは相当難しいから、シャドウステップを召喚している魔方陣を探して壊すのがいいだろう。問題は、その召喚魔法の陣が学校内にあるという確証がないことと、恐らく複数あるだろいうということ。一つ二つ壊しても、恐らく魔方陣そのものに大きな影響は出ない。そして三つ目は、カナタを助けること。カナタの囚われている樹木が、イビルゲートと現世を繋ぐ中継点のようになっていると見た。そこからカナタの生命エネルギーを送り込んで餌にしている。ならば、カナタを助けることができれば悪魔の召喚を防ぐことができるかもしれないし、場合によっては魔力を逆にイビルゲートに注ぎ込んで門を封じることも可能かもしれない」 「……おい、聴いたかカナタ!」  この距離なら、話は聞こえているはず。ルイスはカナタに向かって叫んだ。 「お前も、その樹木をぶっ壊す方法とか、何か考えろ!黙って囚われてるようなお姫様じゃねえだろ!」 「ルイス……!」  ルイスの言葉に、彼方はこくりと頷いた。大丈夫。まだ、自分達は誰も絶望に負けたりしてはいない。 「ルイス!カレン!リンジー!」  ぱたぱたと走ってくる足音がした。見ればイザベルが、ジェマや他の数名のクラスメート達を引き連れてこっちに来ているではないか。どうやら、まだ学校に残っていたらしい。 「委員会で残ってたら、なんか大変なことになってるっぽいんだけど!悪魔召喚とか聞こえたけど、マジなわけ!?」 「マジだ。あっちの、あくどい顔をした方のジャクリーンがやらかしてる」 「うわ、ほんとだ。ジャクリーンが二人いる……どういうこと!?」  混乱するメンバーたちに、ルイスはかいつまんで状況を説明した。木に囚われている方が、夏休み後のジャクリーンであること。悪魔を呼びだしているのが、その前のジャクリーンであること。  何故二人いるのか、を詳しく話している暇はない。今、自分が伝えるべきこと、それは。 「あっちの捕まってるジャクリーン……カナタを助けて、悪魔召喚を食い止めたい。お前ら、手を貸してくれ……!」
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