二十年前

1/1
前へ
/4ページ
次へ

二十年前

葛城優子は母親の葛城京子と折り合いが悪くいつも喧嘩が絶えなかった。 近所でも有名なくらい仲が悪い親子だった。 葛城京子は優子が生まれてすぐに夫の強と離婚した 離婚理由は今話題になっている夫のモラハラ行為だった。 それでも我慢して夫婦をやっている人は沢山いるだろう。でも、酷い暴言を毎日、仕事から帰ってくると言う夫をどうしても京子は許す事が出来なかった。 そして優子が産まれたばかりで育児が忙しい時 「少しは育児に協力してほしい」そう夫に話すと 夫は京子にこう言ったのだ。 「誰の金で食わせて貰ってると思ってるんだ!! お前は昼間、家にいて子育てと言っても三食昼寝付きだろう?ぐうたらできていいよな?」 その言葉に京子は初めてこの人とはやっていかれない。そう思い、まだ赤ちゃんだった優子を抱いて 離婚届を置いて、夫が会社に行っている間に家を出た。 あの時、赤ちゃんだった優子はもう二十歳だった。 優子は、中学生の頃から京子に反発するようになっていた。 母親の京子には全く心当たりがなかった為 「お母さんの何が不満なのか?教えてほしい」そう話したのだが優子は母親の話に耳を傾けようとはしなかった。 それどころか忘れていた二十年前の記憶が蘇ってきた。 元夫が私に言った言葉「誰の金で飯を食べさせて貰ってると思ってるのか?三食昼寝付きだろうぐうたらできていいよな?」 京子は今、娘に「お前は楽してるんだろう?ぐうたらできていいよな?」そう言われていた。 まるでモラハラした元夫のようにとても怖い顔をして 京子はその時、初めて娘の優子に怒りと憎しみを感じた。そしてついに大声で一人娘の優子に言った。 「もう、出て行って!帰って来ないで!」 京子は優子の物を家の外にに全て出すと優子を追い出し鍵を掛けた。 京子は優子が帰ってきても決して家の鍵を開けることはなかった。 「開けろよ!てめえ」そう言ってドアを蹴る娘に京子は一言優子に言った。 「あなたは決して言ってはいけないことを言った!お母さんも許せない事があるの!だからもうこの家に入ることは許さない。一人で生活しなさい。大学も辞めたんだからね」 それから京子と優子の親子が会う事は二度となかった。 互いにどこで何をしているのか?わからないまま 時が過ぎていった。 京子も実家に戻り、住んでいた団地は引き払った。 実家は京子の結婚を反対していて疎遠になっていた為、優子はおじいちゃんと、おばあちゃんの家が どこにあるのか?それさえもわからなかった。 優子は完全に母親の京子に捨てられたそう思っていた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加