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がらにもなく高揚していることは、認めざるを得なかった。
私の心も、体も。
でも、これはいけないことだ。
私にも、私の隣に横たわった、一つ年下の彼にも。
「サリ。サリはおれと、こういうことしたい?」
光漣が、私の目を、すぐ真横から覗き込んでくる。
上から覆いかぶさる形にならないように、首を持ち上げもせずに、床にぴったりとくっついて。
十九歳の男子って、こういうとき、こんな気遣いをするものなのかな?
そう考えると、自分が光漣にとって特別な存在なんじゃないかという思いが膨らんでくる。
「……分からない。分からないよ。私、どうしよう。でも、よくないことなのは分かってる」
「……泣くなよ」
「泣こうとは、してないんだけど」
「いつもはなつかない猫みたいなのに、こんなときはしおらしい犬みたいだな」
「なに笑ってんのよう」
「彼氏持ちなんて、面倒だから、絶対に手を出さないって思ってた。しかもあんたみたいな、その」
「……その?」
「ガキっぽい女」
おい。
わずかずつ、互いの唇が近づいていく。
光漣が私に与えた猶予が、段々と減っていく。
光漣の、少し伸ばした赤い前髪と、私の髪が重なった。
「光漣、だめだと思う、それは」
「そうだな。これは、だめなことだ」
光漣の唇は、すんでのところで軌道を変えて、私の目じりに、そこに流れた涙に触れる。
蝶が蜜を吸うみたいだな、と思った。
隠しきれなかった感情の中身を、暴かれてしまったようだった。
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