ショートショート

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ショートショート

今日は快晴だ……、僕の記念日にはちょうどいいっ。 僕は田中。中学2年だ。スクールカーストも圧倒的に下で、勉強もスポーツも出来ない。モテない。ギネスも取れる程モテない。しかし、それも納得してしまうほど取り柄がない。全米が泣くなこれは。 それは良いとして。僕は作戦を考えたのだ。スクールカースト下位から抜け出しモテる方法を。 僕は、友達にも言っていない。言わずもがな、友達もモテないので、出し抜くつもりだ。ふふっ。あやつらの間抜けな顔が早く見たいな。 やっ、やばいっ……。うんこ漏らしたのを隠している時より緊張してきた……。 今日は始業式。ニュー田中となった僕を友達に見せつけて、みんなの間抜けな顔を拝む日。 そう思うとワクワクしてきたな。僕は起きた早々に制服に着替え、学校指定のバッグをからった。朝ごはんは食べない。どうせ午前授業だし、まぁいいかと思った。 好きなアニメの曲を口ずさみながら、玄関を開け放った。……いやあちぃな!!もう9月なのに……。 まだまだ夏色が残る道を、スキップしながら歩いた。朝も早いことがあり、誰も歩いていない。僕の独壇場だ。 おっ、セミだ! 夏の風物詩だよな。この鳴き声ももうすぐ聞けなくなるのは寂しいな。 あっ! ネコちゃん! 首輪着いてるし飼い猫かなー。僕も一人暮らししたら、一緒に住みたいな。 普段の僕なら気づかない夏を、朝だけでも沢山見つけた。 風鈴の音色。セミの声。 僕が気づかなかっただけで、この道はこんなにも夏が溢れていたのだ。夏のオーケストラを指揮するように、リズム良くスキップした。 ……学校着いた。やっぱりドキドキするなぁ……。 校舎はは夏の陽射しを受けながら、どっしりと僕を構えていた。ロールプレイングゲームに出てくる魔王城並だ。 足が震えた。心臓の鼓動が早くなる。汗が頬を伝う。 「あれー? 田中君じゃん。 何してると?」 「っ……!」 声にもならない音が喉から漏れた。我ながら恥ずかしい。 声をかけてくれたのはクラスのスクールカースト上位の女子だ。たまに声をかけてくれる優しい子だ。 「あははっ。なんで制服着てると? まだ夏休みやんー」 えっ……!? なんで?! 今日だったはず……。 「田中君、頭良さそうなのにねー。てかさ、今日なんかカッコイイね。イメチェンいい感じよっ!」 えっ!?!? 「学校は明日だからね。じゃあまた明日っ!」 また明日っ!?!?!? そう言うと、クラスの女子はスカートをひらめかせて帰っていった。 ……あれっ?あの子も制服だったよね……。もしかして、同じ間違いしたのかな……。 僕は、少しだけ、キュンとした。……少しだけっ。
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