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スカートの丈が短い女、ゾンビのように歩く疲れ果てたサラリーマン、倒れこみ動かない酒に酔った男、爆発音のような大きな笑い声。 僕にはまるで似合わない、ギラギラした繁華街の隅を、人を避けながら歩く。 腕時計を見ると、深夜1時。もう母親は寝ている時間だろう。 高校を出てから数ヶ月は、近所の工場で働いていたが、上司との折り合いが悪く辞めた。何個か仕事を転々としたものの、どうにも上手くいかず、二年前からは、いわゆるニートだ。 昼頃に起きては、夜までスマホをいじるか、ゲームをするか、漫画を読むか。 何か用事があれば外に出て、今日のように真夜中までフラフラと町を回る。 何もない毎日をボンヤリ繰り返している。 生憎実家暮らしで、母親が仕事をしているため、生活には困らない。 これが26歳の今の年齢からして、いいことなのか悪いことなのかは分からないが。父親が死んでから余計無口になった母親とは、もう数ヶ月会話をしていない。 将来の事、現在の事、考えないわけじゃない。 毎日不安に押し潰されそうではあるが、どうしようもない。動けないのだ。勇気もなければ自信もなく、背中を押すものもなく、支えてくれるものもなく、誰かがネットやテレビや街中で言う「甘えるな」「もう大人だろ」「社会人なのに」そういう声が、頭の中にループするだけ。 ''ポッカリと心に穴があいたような''、小説でよく使う言葉で表現するのならば、まさにその通りだった。 道端ではしゃぐ制服姿の女達、本当の年齢は分からないが、その高い声がうるさくて、逃げるようにコンビニに入った。 コンビニに並ぶ商品が人間なのだとしたら、ここに僕はいない。 僕がいるのはゴミ箱の中だ。色も名前も形もにおいもなく、必要とされず、誰にも見つけられない。 どこにいてもこんなことを考えてしまう。 イチャつくカップルの横に手を伸ばし、悩まずペットボトルに入った水を取った。 「宮田?」 後ろから低い声で名前を呼ばれ、思わず飛び上がりそうになった。 考える暇もなく振り向く。 名前を呼ばれるなんていつぶりだろうか? 緊張で顔に熱がこもるのを感じた。 「やっぱ宮田やん」 と言って、フッと馬鹿にしたように笑った声がした。 振り向いてもそこに顔がなく、少しばかり見上げなければならなかった。 180以上あるだろう大きな体と、根本に地毛である黒が見える、派手で汚い金髪が目に飛び込む。 地黒の肌と、何を考えているのか分からない、光の無い一重の目に、見覚えがあった。 加藤。 声には出さなかったが、すぐにわかった。 僕の幼い学生時代の中で僕の記憶を支配しているこの顔と声。 一瞬で、体がガチガチに固くなった。 緊張と恐怖、そして不愉快な興奮、頭の中で、思い出さまいと、古い箱にいれていた記憶が、鮮明に蘇った。
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