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*** 加藤と僕が知り合ったのは、小学3年生。些細なきっかけからだった。知り合ったと言っても、その時はマトモに会話をしたこともなかったが。 授業が終わった放課後、強制的に参加させられる委員会活動の中で、僕が入っていた給食委員会に、彼も同じく入っていたのだ。 それも、僕と彼は隣のクラスだったため、委員会が開かれる時は、いつも彼が僕の後ろの席に座っていた。 加藤は僕たちのクラスでも有名人だった。 小学三年生ながらに高学年にも負けないくらいに体格が良く、だからといってその体格を生かして他人を助けるなんてことは全くしない。 協調性がなく、よく他の生徒とトラブルになっては、手を上げ、腕っぷしが強いため周りに怪我をさせる。その上先生にも反抗的な態度をとるため、別のクラスでも名前と顔を知っているくらいには問題児であった。 彼が暴れん坊のガキ大将だと知っていた僕は、委員会初日からかなりビビっていた。 元から物静かな性格で、他人との争いを好まない、通知表にも「態度」の項目ではいつも○をたくさん貰うような僕にとって、加藤は脅威だった。 そして案の定、彼は委員会中よくトラブルを起こした。 司会が話している途中に机に突っ伏して寝る、そしてそれを注意する先生に大声で言い返す、グループでの話し合いもマトモに参加せず、すぐに不機嫌になっては高学年の生徒に挑発的な言葉を言い、喧嘩になった。 今思えば小学生の子供の反抗なんて可愛らしいものかもしれないが、当時の僕にとって加藤は恐ろしいし、厄介な存在だという認識が強くなった。 特にその認識をハッキリと持ったのは、彼が僕にちょっかいをかけるようになってからだ。 後ろの席の彼が、僕の椅子を蹴ったり、頭に消しゴムやら物を投げてくるようになった。 振り向いて彼を見ると、ガムを噛みながらこちらを見てニヤニヤしている。 なにも言わず前に向き直ると、また椅子を蹴られる。振り向くと彼がまたニヤニヤ笑いながら 「文句あんならハッキリ言えば」 と、面白そうに言う。 僕はなにも言わなかった。 ただ黙っていた。 他の生徒なら、ここで、なにか言い返して喧嘩になるのだろう。でも僕はそんなことはできなかった。彼に張り合っても力で負けることは分かっていたし、彼にとって、からかって遊ぶ相手は僕だけじゃなく、他にも大勢いた。しばらく我慢すればだんだん飽きるだろうと思っていたのだ。 しかし、彼からのその「嫌がらせ」は、少なくなるどころか、むしろエスカレートしていくことになる。
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