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「はあ!?」
いきなり名前を出された陶山は勢いよく立ち上がり「いやいや、無理無理」と慌てて否定したが、クラス中から「いいじゃん」「そういえば去年、陶山のクラス優勝したよね」と肯定する声が上がり始める。
「俺より合唱部の奴らとかの方がいいんじゃないの?」
陶山は教室中を見渡す。
「合唱部だからって指揮ができるわけないよ?」
合唱部に所属している女子生徒の一人が、陶山に向かって言うと、それを合図にしたように、
「そうそう、私たちは歌う担当だから」
「指揮者は顧問の先生がいつもやってくれるもんね~」
安本と一緒に陶山を指揮者に推している男子が「ほら、もう陶山でいいじゃん。お前の指揮は優勝に導いたんだぜ?」と大きな声で言うと、「もう陶山で決定だよね」「陶山以外考えられないよ」と、みんなが彼を煽てる。陶山はその声に天を仰ぎながら「もうわかったよ」と投げやり気味に自分の役割を受け入れた。
「それなら、指揮者は陶山で」
中野さんが黒板に彼の名前を書くと、自然と拍手が沸き起こる。
「陶山、かわいそ」
彼をみながらぽつりと呟いた私の言葉は、拍手の音でかき消された。
「次、ピアノの伴奏者、誰かピアノ弾ける人いませんか?」
中野さんがさっきよりもほんのわずかに明るめの声で教室に問いかけた時、千枝が「涼音、ピアノやってよ~」と少し離れた席から私の方をみた。
「私!?」
まさか自分の名があがるとは思っていなくて、確かめるように自分を指さす。すると千枝は「うん、だってピアノ弾けるじゃん」とあっけらかんと言い放った。
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