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「それなら、他に、うーん、」
伴奏経験者を探そうと教室をぐるぐる見渡していると、「泉本」と陶山に呼びかけられる。
「もういいじゃん。一緒にやろうぜ」
「ええ、陶山……」
あなただって嫌々引き受けたんだから、あなただけは私の味方してほしかったのに。
「他にピアノ弾ける奴いなさそうだしさ。一緒にやろうぜ」
「いや、私、そもそももうピアノのレッスン受けてないの。素人が演奏するわけにはいかないでしょ?」
「弾けるんだから素人ではないじゃん。それに昔はピアノ習ってたんだろ? 腐れ縁同士、一緒に頑張ろうぜ」
「では、ピアノは泉本さん、お願いします」
中野さんは私と陶山のやりとりに自然に入ってくると、満面の笑みを私にみせる。
「ええ、そんなあ……」
困るんだけど、と呟いた声は、次は自分に向けられた拍手の音でかき消された。
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