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「駅前に大きな百貨店あるじゃん。4階だったかな、文房具屋さんがあるでしょ? あそこなら売ってると思うよ。この前千枝たちと行ったんだけど、かわいい商品が揃っていた」
「そっか。ちなみにこれ、どんな花が良いとか人気とか、あんの?」
「うーん、それは好みにも関わってくるから難しい質問だなあ。お母さんの好きなお花でいいんじゃないかな?」
「えー、それこそ難しい答えだわ……」
「まあ、きっとなんでも喜んでくれると思うよ。もらえるだけで嬉しいと思う」
「泉本、今週いつか放課後あいてない?」
「え?」
「ついてきてよ。俺、サッパリだもん、こういうの」
ええ……。それは少しマズイような……。
一瞬にして脳裏に千枝の怒った顔が浮かぶ。
「何? 忙しい?」
「いや、うーん、まあ」
「あ、面倒だって思ってるんだろ」
「違うよ、そんなことない」
「それなら頼むよ。お礼に何か奢るからさ」
本当に全くわからないんだって、と頼み込み彼に折れ、「わかったよ」と答える。
千枝のことを思うと、できるだけ二人で出かけたくはない。ただ、陶山に至っては、5年の仲だ。同級生のどの男子より付き合いが長い。何より5年間も同じクラスだと、例え些細なことだとしても、助けてもらったことがたくさんある。私が日直の時に一緒に黒板を消してくれたり、ノート返却を手伝ってくれたり、代わりにゴミ捨てをしてくれたり。
「明日とかどう? 部活ないんだけど」
「明日か……、あ、明日いいじゃん、明日にしよ」
明日は千枝が所属しているソフトボール部の部活がある日だ。2人でいるところを見られる可能性は限りなく低い。後ろめたい気持ちを感じつつ、いくなら明日しかないとも思う。
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