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出会い
「キミ、天使だね。」
「…さっきからなんか見てくるなと思ったら、あんた天使がみえるのか。」
女性が空にむかって話しかける。そこには何もいないが、彼女にはみえる。羽を背中にはやし、頭の上に輪っかを浮かばせている少年の姿が。
「羽と輪っかがみえる。だいぶくたびれてるね。頑張りすぎじゃない?あ、私は占い師。仕事柄よく相手を観察するんだ。相術(そうじゅつ)占いが得意でね、相手をみて良い運勢へとむくようアドバイスをしているのさ。」
占い師の女性はそう説明した。
相術とは、占う対象の形や姿からその人の運勢や状況などを判断する占いである。彼女は他の方法よりこの占い法をメインとしている。
「それでおれのことをジロジロみてたのか。おれはみての通り、天使。天界に魂を導いている。同じ導くことが仕事なのか。同業者だな。」
天使の少年は冷静に答えた。彼は占い師と同じ目線の高さまで降りてきた。
「導くだなんて大げさ。ちょっとアドバイスして良い方向に向かえばいいなぁって感じ。でも導くって言葉いいね!」
占い師は嬉しそうに言った。導きという言葉が気に入ったらしい。
「そういえばあんた、最近この町でよくみかけるな。」
天使があごに手を当てて考える。
「え、なになに?噂になってるって?私、最近この町に来たんだよね。へへっもう噂に…」
「いや、なってないが…仕事柄よく周りをみているんだ。弱ったり傷ついたりした魂を探して、癒して元気にするのも天使の仕事だからな。それでよくみかけてるだけ。」
天使が占い師の言葉を遮って説明した。彼は表情をあまり変えることはないらしい。
反対に占い師の女性は感情が豊かだ。彼女は大袈裟にガッカリと動作をした。
「なーんだ…そうだ!キミも占ってあげよう。せっかくだし、サービスだよ。」
「いやいいよ、そんなことしなくて。おれは迷ってないから。」
「ふむふむ。アドバイス!油断はするな!以上!」
「聞いてねぇ…」
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