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捕獲作戦!
「危ないって…」
表情をあまり変えない天使の少年だが、この時ばかりは心配そうな顔をしている。
「大丈夫大丈夫!どこにいるんだろ~ね~。」
占い師は前を向いたまま、ずんずんと先へ行く。
「前ばかりみてないで、左右もよくみなきゃみつからないよ…」
周りをみまわしながら天使は彼女の後ろをついていく。
「いたいた、あの空き地の真ん中にいるトラ猫だ。目立つ場所でまた弱ったフリか。」
結局天使が猫を見つけた。先程とは違う、少し広めで草が生い茂っている空き地の真ん中で、猫が倒れている。
2人は少し離れた茂みの影に隠れて様子をうかがう。
「毛並みがキレイだな~。」
占い師が感心して言った。彼女は占う対象を観察する仕事柄、よく相手のいろんなことに気がつく。
「とりあえずゆっくり近づいて…」
天使が茂みからでて、ゆっくりと猫に近づく。
とその時、猫が顔をあげた。ギラギラした目で天使の姿をとらえたようだ。
「しまった、気付かれた!」
彼は慌てて空へと逃げる。猫が天使に向かって飛びかかってきたのだ。
「おー攻撃が早い!おっ連続猫パンチ!」
占い師は猫が天使に攻撃するのをみて叫ぶ。
「ちょ、ちょっと実況しなくていいから!…避けるので精いっぱいだ。」
猫は背中から悪魔の羽をだし、空を飛びながら天使を追いかける。スピードが速く、天使に追いつくと鋭く尖った爪で引っ掻こうとしたり、パンチをくりだしたりしている。
占い師はうーんと考えてから、はっと思いつく。
「猫の動きをよーくみて!いつ攻撃してくるか観察するんだ!」
彼女は天使にむかって叫んだ。
「動きをよくみる…」
天使は猫の攻撃を避けながらも、できるだけ猫をずっと見つめ続けた。
「あっ、これは飛び掛かってくる!」
何度か飛びかかってくる猫を避けていた天使は、あることに気づいた。猫は飛びかかる前、一瞬腰を高くしてスピードをつけて飛び出してくる。
「飛び掛かってきたら後ろに回り込んで!こっちのチャンスを掴んで!」
占い師の指示に従い、天使は飛びかかる猫を避けてくるりと背後に回り込んだ。
「…やった!」
と占い師が声をあげる。
「今だ!それっ!」
天使は両方の手のひらを合わせるとパッと猫へむけて、手のひらの中から現れた何かを解放した。
光輝く網だ。天使の手の中から飛び出したそれは猫を覆い隠す。
一瞬だった。振り向く間もなく猫は網をかぶった。
「おー光の捕獲アミ!」
占い師は初めてみた光輝く網をみて、驚いた。
猫は網をかぶったからなのか、光に包まれたからなのか、大人しくなった。
「その猫悪魔、どうするの?」
占い師が天使が抱える網を覗き込んで彼に問う。
「とりあえず天界に連れていくか。」
と天使は答えた。
「消しちゃうの?」
悪魔が天使を消滅させることができるなら、逆もあり得る。そのことに気づいた占い師は心配そうに聞く。
「それはしない。悪魔は普通、温厚だからな。」
と天使は猫を網ごしに撫でながら言った。
「それじゃあ、お別れだね。キミといるの楽しかったよ。」
安心したように占い師は笑顔になった。猫は結構大きく、抱えるのが少し重そうにみえた彼女は早く天界へ行けるよう、別れをきりだした。
「またね。」
と手を振る。
「あぁまたな。」
天使は挨拶代わりなのか、羽を小刻みに揺らすと空へと羽ばたいていった。
太陽の光が顔を照らし眩しかったが、占い師は見えなくなるまで彼らを見送った。
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