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良い導きへ
1週間が経った。
占い師が町を歩いていると、あの天使の少年が彼女の前へと降りてきた。
「やぁ久しぶり天使くん。今日会えて良かったよ。猫悪魔はどうなった?」
と彼女は再会を喜んで言った。
「1週間かけて天使たちと天界に慣れさせた。天界の看板猫になったぜ。居心地がいいのか、魂をみても襲わなくなった。」
表情を少し柔らかくして天使は答える。
「かわいいねぇ。」
占い師はゴロゴロのどをならしながら天使に甘える猫を想像し、微笑んだ。
「それでお礼を言いにきた。あんたのアドバイスのおかげで捕獲できたし、学ぶこともあった。」
祝福するかのように天使はくるりと占い師のまわりを飛び、彼女の目の前に戻ってきた。1枚羽が抜け、占い師の前にひらりと落ちてくる。彼女はそれを受け止めようとしたが、触れるとほのかに光って消えてしまった。
「相手をよくみる…おれは周りはよくみるが、1つのものをよくみていなかった。猫悪魔が弱ったフリをしているのも見抜けなかった。」
少し悔しそうに天使が言う。
「それは良かった。私も学ぶことあったよ。キミをみてたらキミが周りをよく見て動いているのが分かってさ。猫もすぐ見つかったし!」
占い師も天使の少年から学んだことを伝えた。
「そうか、役に立てたなら良かった。おれもこれからは相手をよくみて相手のことを考えて動くよ。」
嬉しいことを表現しているのか、天使の羽が大きく、柔らかに動いた。彼は表情をあまり変えないが、羽でよく感情を表しているみたいだ。わざとなのか、気づいていないのか…
「お互い良い導きができたね。」
占い師がうんうんと頷きながら言った。
「そうだな。」
天使がそれに同意する。
「…それでね、私は今日、この町を離れるよ。周りをよくみるとここは天使が多くてね。天使たちが見守ってるおかげか、なかなか悩みをもつ人が見つからなくて…」
占い師が寂しそうに言った。よくみれば彼女は大きなスーツケースを持っていた。
「天使が弱ったり傷ついたりしている魂を癒しているからな。それで悩みも吹き飛んでしまうのかもしれない。」
天使がちょっと考えて答えた。
「キミに出会わなかったらずっと周りをみずに動いていたよ。天使だらけに気づかなかった。この町じゃ人を良い方向へ導くのは天使の仕事だ。」
「占い師の出番はないな。」
2人は顔を見合わせて笑う。
「別の町で占い師として人々を良いほうへ導くよ~。」
「寂しくなるな…そういやお互い名乗っていなかったな。おれはテンシチ。」
「私はナナ。悩める人たちを良い方向に導く占い師!」
「またどこかで会ったらよろしく。」
「うん、またね!」
占い師ナナは小さく手を振ると、そのまま真っ直ぐ歩いていく。
天使のテンシチは彼女の姿がみえなくなるまで見送ると、彼女と反対方向へ飛び去った。
〜完〜
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