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始まりの日
「わー! ねぇおばあちゃん、この人すごいお洋服着てるね!」
「えぇ、本当ねぇ。でも、お歌も上手でしょ?」
こたつの中で蜜柑を食べながらおばあちゃんが微笑む。
「うん。ゆりもお歌大好き!」
「ふふふ。ゆりちゃんもお歌上手だもんね。また明日聞かせてね」
テレビの中で金銀のテープがきらきらと輝き飛び出した。
「うん。ゆりもいつかここで歌っておばあちゃんにきかせてあげるね!」
「あらあら。楽しみにしてるわね」
「うん! やくそく! ゆーびきーりげーんまーん……」
歌に合わせて小指と小指を繋ぎながら、おばあちゃんは左手で優しく私の頭を撫でた。
しわしわだけど、あたたかい手。
年に一度、夜ふかしが許される夜。
眠い目を擦ると遠くで魔法の鐘の音が響いていた。
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