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夏美の行動力には目を見張るものがあった。
元々学級委員だし、クラスの人気者というのもありあっという間にクラスみんなの協力をこぎつけた。
夏美はそれだけで満足をせず、クラスどころか学校中を巻き込んだイベントを開催することになった。
次の夏の文化祭シーズンに向けてみんな乗り気になり、そこから長期的に計画が進んでいった。
演劇部にはステージの手配を、家政部には衣裳の手配を、吹奏楽部には演奏の手配を、他にも有志の生徒を集めて次々に準備が整っていく。
初めは乗り気じゃなかった人たちも、夏美に乗せられて段々とやる気が出てきた。
みんな田舎の高校生活に刺激を求めていたのか、夏美の力なのか。
私はどこか馴染めずにいたクラスメイトたちともイベントを通していつしか良く話す様になって、とにかくみんなが一丸となって準備を進めていった。
話を聞いた町の人も、制服を見れば楽しみにしていると声をかけてくれることもあった。
みんな、町をあげて応援してくれている。
私も頑張らないと。
おばあちゃんの好きだったあの曲。
部屋で布団をかぶって、放課後の音楽室で、黄昏の河原沿いで、いつかのカラオケボックスで。
一つ一つのフレーズに気持ちを込められる様に思いが伝わる様に。
そうして時はあっという間に過ぎていって、とうとう文化祭当日になった。
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