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「ねぇ、何であんなこと言ったの?」
テーブルの上に麦茶の入ったグラスを置くと、中で氷が揺れて小さな音を立てた。
「あんなことって?」
「だから、さっきのおばあちゃんとのこと。そんな、友達になれて嬉しい……とか」
「どうして? だって、私本当にそう思ってるし。百合は違うの?」
夏美は部屋の中を見回した後、真っ直ぐに私の目を見て尋ねた。
「いや、その……」
その目にあまりにも曇りがないから、私はたじろぎながら答える。
「私も……そう思ってるけど……」
煮え切らない答えなのに、夏美は満面の笑みを浮かべた。
「それならいいじゃん! 優しそうなおばあちゃんで羨ましいな。仲良いの?」
「別に。普通。それよりさ、早く宿題やっちゃおうよ」
何かを誤魔化すように麦茶を飲んで、私は宿題を取り出した。
夏美は何か言いたげだったが、少しの微笑みの後同じように宿題を始めた。
窓の外では秋虫が鳴いている。
その声は美しく響いていって、やがて天まで届いていきそうな夜だった。
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