奪われる日

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奪われる日

「ねぇ百合。将来のこと考えてる?」  九月も半ばに差し掛かった放課後の教室。  机に頬杖をつきながら窓の外を見つめ、夏美は私にそう尋ねた。  どこを見ているのか焦点の定まらない物憂げな視線。 「うーん、どうだろう……? 夏美は?」 「……私、また東京に戻るかもしれない。こっちには、あまり大学も就職先もないから……」  東京。  そのたった二文字の言葉が私の胸を締め付ける。   「やりたいことって?」 「私、メディア関係の仕事をしてみたくて」  応援してるよ。頑張って。  友達が夢を語っているのに素直にそう言う言葉が出てこない自分がいやになる。  行かないで。一人にしないで。  そういう思いを込めて、私はただ 「そうなんだ……」  と呟いた。  あれから結局、夏美とはカラオケに行けていない。  次第に短くなる昼と対照的に、段々と夜が長くなってきた秋の始まりのことだった。  
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