百年越しの声

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いつからだっただろうか。彼女の声が聞こえるようになったのは。 高校の校門を跨ぐ。眠い。昔は朝が嫌いだった。けれど、今はそうでもない。あいつの声がいつくるか。楽しみだった。本人に伝えたことはないけれど。 『おはようございます。光』 来た。思わず下駄箱の前で止まる。不審がられてないか周囲を気にしつつも、僕はすぐに返事をする。 『おはよう、鈴音』 『今はどこにいますか?』 『学校。面倒くさいったらない』 『頑張ってください』 笑みを含んだ声に感じた。僕はダルそうに『おー』と答える。テレパシー。高校に上がってしばらくした頃、僕は鈴音の声が聞こえるようになった。 初めは確か、美術の授業中だったと思う。図鑑に載っている魚を描くことになり、僕は楽そうな魚を選んでいた。むう、と内心で唸っていると、『考え事?』と鈴音の不思議そうな声が聞こえた。
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