あなただけ見つめてる

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「さ、さっ、先輩、早く飲みに行きましょう?」 「は?えっ? えーっと、ああ、春香ちゃん? 久しぶり…、ってか1ヶ月ぶりか。よくオレがここに居るって分かったね。 ていうかさ。飲みって…?」 私は、駅前ロータリーに面したビルの2階にあるカフェの窓際の席で、一人座ってコーヒーを飲んでいた徹也先輩の向かいの席に腰掛けながら、唐突に切り出した。 「徹也先輩、ちょうど1ヶ月前の今日のこの時間、駅前のコンビニで会った時、 “久しぶり!元気だった?今度飲みに行こうよ”って誘ってくれましたよね?。 それであの日、私も“ぜひぜひー”ってお伝えしてたはずです」 「そんな約束したっけ?…ってか、したかも知んないけどさ。 それは社交辞令って言って…。 いや、久しぶりに知り合いと再会した時の決まり文句っていうかさ。 そんな約束、本気にしないでよ」   「えーっ、私、徹也先輩からのお誘い、チョー楽しみにしてたのに…」 「んーなんだかよくわかんないけど、ごめん。てか、なんで“今日”?」 「あの日、飲みにいく日の明確な日にちの指定が無かったので、その時言われた“今度”を、私の中で1ヶ月以内と定義しました。 それで1ヶ月後に当たる今日までに具体的なお誘いがなかったので、タイムリミット到来と判断し、1ヶ月以内の約束を果たすには今しかないと判断しました…」 私が早口でそう説明していると、先輩も理解してくれたようで、手を振って私の話を遮った。 「分かった分かった。 キミってこんな子だったっけ? じゃあ…、今度…。また今度な?」 「今度っていつですか?」 「今度って言ったら、今度だよ…」 「それじゃあ堂々巡りです。 いつ飲みにいくのか、今ここで明確に決めてしまいましょう」 ---少し強引だったかな? でも、私の意外な一面にドキドキしてくれたのか、先輩も一つ大きな息を吐くと、具体的な日時をようやく口にした。 「じゃあ、来週…、来週の金曜の夕方、今日会ったこの場所、この時間で、それでいいかな?」 「分かりました。それなら了解です。 今日は諦めますので、来週、楽しみにしてますね」 苦笑いしながら、コーヒーを残したまま席を立ってカフェを出ていく先輩の背中を見送りながら、私はバッグの中からスマホを取り出し、先ほど取り付けた約束をスケジュール管理アプリに入力した。
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