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「橘さん、星が好きなんですか?」
私は隣にいる彼に勇気を出して話しかけてみる。
「今夜は晴れているから、運が良かったら9月ペルセウス座ε流星群が見られるかもしれないと思って」
「9月ペルセウス座……流星群?」
「8月のペルセウス座流星群と似ているけど、輻射点の位置や出現数の変化によると全くの別群だと思われている、ちょっと謎めいた流星群なんだ。母体星も分かっていないしね。いつもは1時間に5個程度とあまり出現数はないけど、今夜は特別に5倍降ってくると言われているから」
「へえ……橘さん、星に詳しいんですね」
「まさか。今のは知人の受け売り」
橘さんはそう言うと、少し悲しそうに微笑んだ。
気になる表情に見とれていると、「あ、流れた!」と彼が夜空を指差した。私が見上げた時には当然もう流れ星は消えていた。
「残念。見逃しちゃったね」
「次は絶対見つけますよ! お願い事したいし」
「……どんな?」
「そ、それはもちろん……」
この幸せが、永遠に続きますように。
恥ずかしいから口には出せなかったけど、顔にはバッチリ出ていたみたい。
「僕も、同じ願い事をしようかな」
そう言って、彼は私の手を握った。
嬉しくて舞い上がってしまったその時、目の前でキラリと星が光った。
「あっ、流れ星」
202X年、9月10日。
その夜、9月ペルセウス座ε流星群からひとつの隕石が地球に落下した。
直径およそ15メートルの巨大な隕石は、落下地点から2.4キロ内の建物を壊滅させた。
なお、落下地点の美浜運動公園からは後に高校生と思われる二人の男女の遺体が発見された。
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