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「あれ、ラブレターだろ? いいのかよ。こんなところで俺としゃべってるの見られたら、変な誤解されるかもしれないぞ」
「心配してくれてるの? やさしー」
「ちげーし。痴話喧嘩に巻き込まれたくないだけ。俺、関係ないのに」
二階堂はほんのり赤い横顔を見せる。
私の胸の奥がずしっと重くなった。
「大丈夫だよ。あの手紙、あの人は結局読まないの」
「は?」
「あの手紙は、あの人の大切な人が勝手に読んじゃうの。それで、勝手にあの人と私をくっつけようとするんだ。自分は不治の病で、もう先が長くないって分かってるから」
「……何それ。妄想? 随分と悲観的だな。星野らしくないっていうか」
「悲しくてもそれが現実なの。だから私は、今朝ラブレターの中身を書き直したの」
ますます不思議そうな顔をする二階堂に、クスッと笑う。
ここから先は、本当に私の妄想だ。
私が書き直したラブレターは、午後1時直前になって彼女──西野梓さんの手に渡る。
彼女は橘さん宛のラブレターだと思っていただろうから、内容にかなりびっくりするだろう。
あの手紙に、私はこう書いた。
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