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0001 あの二人、はしゃぎすぎで信用できない
とある主人のいないおしゃれな部屋の中で、侵入者は毒のような甘い囁きを吐きながら小細工をしている。
「これで、あんたのものはあたしのもの」
盗聴器、盗撮器をベッドの下や、引き出しの裏側、押し入れの隅にしっかり固定し、それから、変な文字が書かれている数枚の札を部屋の片隅に隠した。
「あんたはこの家のトップに相応しくないのよ。だから、あんたの王位、あんたの王子、あんたの幸運……全部あたしのものになるの。愚かな部下と『蛮族の世界』で余生を送りなさい。世界が変わったら、あんたが持っていない『異能力』が生まれてくるかもしれないわ。フフ」
扉の外から足音が近づいてくる。
侵入者をここに案内した家政婦だ。
「まだですか? もうこんな時間だし、早くしないと疑われちゃうよ」
家政婦は扉を開いたら、あるイケメンの青年の姿が目に映した。
「もう終わりました。喜美姉さん」
「青年」はさりげなく振り向いて、母親よりも年上の家政婦に向かって愛想のいい笑顔を見せた。
「いつもありがとうございます。エンジェとの結婚式で、前列の席を用意してあげます」
この特別な住宅区に無断によそ者を入れるのは禁止事項だけど、毎回もいい報酬をもらっているし、青年の態度も心地よいもの、家政婦は喜んで青年に便利を作った。
ただ、彼女が「イケメン青年」だと認識している人は、防犯カメラの中に映された姿は、イケメンでも男性でもなく、青色の染髪を持つ細い女子だった。
――
数か月後、部屋の主人の少女は、血まみれな姿でとある森の祭壇に倒れた。
――
リカは三杯目のプリンを空きにしたら、ベンチの隣に座っているCEOさんはやっと反応があった。
その反応の理由は、恐らく、プリンのカップはプラスチック回収ではなく、燃えるゴミに捨てられたから。
「あの、ごみ分類をちゃんとしないといけないと思うけど」
まるで大人しい小学生は授業をサボる兄に説教するような口調だった。
七三の分け目で頸の根まで整えた髪、ブルーフレームの楕円型眼鏡、ラベンダー色のTシャツに白いジンズ、清らかで陽気な声、どう見てもどこの大学から公園で朝勉強をするいい子新入生。
けど、彼の後ろに立っている「秘書青野翼」と名乗る人は確かにこうのように彼のことを紹介した。
「僕のBOSS、グローバル企業『神農グループ』のCEO、子川イズルです。恋愛小説の人気タイプのCEOとイメージが違って、恐縮ですが、正真正銘のCEOです。」
異世界のキノコを見るような目でリカはあのCEOをもう一回観察した。
外見はともかく、精神的にとても自称の22歳に見えない。2で割ったらありかも。
「言いたいのは、それだけ?」
リカはティッシュで口元を拭いて、淡々と聞き返した。
「プリンが好きですか?一気に三個も食べてすごい!」
CEOイズルの無垢な瞳は、好奇心が溢れているように見える。
「久しぶりに食べなかったから、何か不都合でも?」
でも明らかに、リカは個人の好き嫌いにつっこまれたくない。
「違います!おぼっちゃま、いいえ、CEO!リカさんの目に映している疑いと軽蔑の文字が見えないですか?!今日の目標もお忘れですか?一番短い時間内で、彼女にこちらの最大な誠意を伝えることです!」
もうCEOイズルの無駄話に耐えられない青野翼は、手足を踊りながら会話に割り込んだ。あるいは、切れた。
えっと……このCEOの名前ってなんだっけ?
だめだ、存在感はあんまりにも薄くて、よく覚えられなかった。
秘書の名前は印象的。
彼のカジュアルスーツは青色で、左胸のポケットに白い翼がついているから。
まさに名前通りの「青野」「翼」だ。
「いいえ、無理矢理な話だから、人に押し付けるのは悪い。ほかの手を探そう」
CEOイズルは首を横に振って、笑顔でリカにバイバイをした。
その様子を見た青野翼は自分の頭を抱えて空に吠える。
「何ということだ!!あの殺伐果敢なイズルおぼっちゃまはどこに行ったのだ!一か月の間にもう100回以上説明してあげたんじゃないか!命に関わっているから、思いやりは禁物!思いやりは禁物!思いやりは禁物だ!」
「落ち着いて翼ちゃん!ここは公共場所、思いやりが必要なんだ。大声出さないで!」
CEOイズルは青野翼を抑えようとしたが、逆作用があったみたい。
青野翼の顔は暴風雨前の雲の色に染められて、声が震えながらCEOイズルに迫った。
「公序良俗の話はもうやめましょう!今のCEOは殺人窃盗誘拐をやり放題しても、ごみ分類や交通ルールを守るのは絶対だめです!」
「オ、オレを何だと思った?!」
CEOイズルは強く抗議。
「お前の方こそ、治療を受けたほうがいい!今すぐ救急車を呼ぶから!そこに動くなよ!」
イズルは電話をかけようとする。青野翼は必死に携帯を奪おうとする。
リカは冷たい目線で二人の低レベルの争いを少しだけ見守った。
すると、カバンからA4サイズのプリント一枚と取り出して、彼たちの目の前に置いた。
「もう有意義な話はないなら、これは私の条件だ」
「?!」
青野翼は驚いて背が震えた。
「リ、リカさんは承諾してくれるのですか?」
「この条件を飲んでもらったら、の話よ」
青野翼の目が光った――
が、プリントの内容を見た次の瞬間、その光は深い悲しみの闇となった。
「千、千倍の月給に……会社の株?!」
「私を雇用するかしないか、あなたたちの自由だ。さっさと決断すればいい」
リカはかなり上から目線で話を投げた。
どこかの恋愛小説にあるステレオタイプの傲慢CEOのように。
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