チャンスが、あるのなら。

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天使は今日も現れない。 俺を警戒しているのか? だけど、何処かから見られているような、嫌な感覚が拭えない。 正々堂々と、俺の前に現れたらいいのに。 現れたところで、話すことなんかないけど。 俺は俺で、彼女に深呼吸を促すしか出来ない。 だけど、出会った頃よりも顔色が良くなってきていた。 彼女の彼氏と、彼女の母親が銘愛を邪険にしていることは分かった。 見るたび、彼女の苦しみがダイレクトに伝わってこっちまで悲しくなる。 なんとかしてやりたい、と本気で思い始めた頃。 「………ゆうが」 彼女の声じゃない。 振り返ると、そこには同級生がいた。 白い羽根、まさか。 「お前は悪魔なんだな」 「ああ。何のようだ」 謝ろうと思った。生前のこと。 だけど……… 「銘愛を救うなんて、よせよ。テメーじゃあ無理だ」 「は?」 「俺はな、柳芽。銘愛をお前に重ねて見てた」 俺に、重ねて……? 「本当、ムカつくよなぁ。人のせいにしてよ」 天使と悪魔は、紙一重。 相容れない、存在。 「天使だからって、なんでも許容するわけじゃねーのに」 ダメだ……… 銘愛、ごめん。 《それで、手を上げたの?》 (すみません) 《………………》 (あの) 《暴力がダメなんて、誰が決めたんだろうね》 (え?) 《正当性を重んじる、って言うなら。君の方がよっぽど理に叶うよね》 (は?) 《合格だよ》 (合格?) 《あのね、君にもう一つ使命を担ってもらう》 彼女を、守ってあげてね。 君なら、大丈夫。 次は間違えないよね。 「何であの時消えたの」 「ごめんって」 もう、君たちは1人じゃない。 再生したから 隣に人がいる喜びを知ったから
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