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「クレヨン、はみでちゃった」
「んー? どれどれ、そんなに焦らなくても、クレヨンくらい拭いたら取れるだろう」
マオが持参した布巾を手にするが、今度は沙雪さんが慌てはじめて、
「いえ、そのクレヨンは油性でして、こすっただけでは取れないんです」
「なんだって?」
「いつもはクレンジングオイルで落としていますので、今お持ちして――」
「あ、大丈夫ですよ」
私は「ちょっと冷蔵庫、失礼しますね」と台所に向かい、
「机の上でしたら、これで落とせますから」
「これって……牛乳、ですか?」
不安げな沙雪さんに「はい」と頷いて、折り畳んだキッチンペーパーに、垂れない程度に沁みこませる。
「私も小さい頃、よく床や机にクレヨンをはみ出しちゃっていたんですけれど、そのたびに祖母と拭いてたんです」
ちょっとごめんね、と戻った食卓で画用紙を退け、牛乳を沁み込ませたキッチンペーパーで軽くこする。
描かれたいたのが少量だったからか、ほんの数度往復させるだけで、クレヨンは綺麗になくなった。
「とれた……!」
感動の声を上げる風斗くんに、私は頷いて。
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