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沙雪さんが帰ってきたのは、二十時を過ぎた頃だった。
マオは二階の風斗くんの部屋。私は、食事はまだだという沙雪さんに、目玉焼き乗せハンバーグにサラダとスープを用意する。
風斗くんのリクエストで、キーマカレーを作ったことを告げると、沙雪さんは項垂れながら、
「そうですか、ハンバーグはパパが好きだから、嫌だと……」
「すみません、実は風斗くんに五日前のことを聞いてしまって……。風斗くん、沙雪さんに元気がないのも、自分のせいだって思い詰めているようでした。今日の外出も、お父さん関連なのではないかと」
表向きは家政婦派遣サービス。けれど本当は、あやかしの血族向けの相談サービスだと言ってた、狸絆さんの言葉を理解する。
切羽詰まっているといっていた。おそらく、沙雪さんが私達を頼ってきたのは……。
「ご迷惑でなければ、お話してくれませんか? 一人で悩まれるより複数のほうが、なにか思い当たることもあるかもしれませんし」
「……お力を、貸していただけますでしょうか」
風斗くんの予想通り、沙雪さんは夫の正純さんの会社に行っていたのだという。
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