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「菜々は、自分は独身を謳歌しているからと言って、結婚してからも、風斗が産まれた時もよく助けてくれたんです。風斗も菜々が大好きですし、私も夫も、家族のようにとても大切に思っています。……ですが」
夫は、菜々と会っていたんです。
震える声で沙雪さんが告げる。
正純さんは、定時から三十分ほど過ぎてから姿を現したらしく。
後を追うと、品川駅で菜々さんと落ち合っていたのだという。
菜々さんの家は、品川駅から歩いて十数分のマンション。
楽し気に話ながら歩いて行く先は、おそらく彼女の家だったのだろうと、沙雪さんが涙を拭う。
「きっと、毎日菜々の家に行っていたのだと思います。五日前の、あの日も。時々シャツから甘い香りがするのも、納得がいきました。夕食を残しがちなのも。菜々は……本当に、素敵な女性なんです。私もずっと、菜々のようになれたらと憧れていました。夫が惹かれるのも、無理はないと思います」
「そんな……。でも、まだ二人が家に行ったのを確認したわけではないんですよね」
「……ついて行こうと思っていたんですけれど、足が、動かなくて」
けれど、と。沙雪さんは緩く首を振って、
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