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「私には、あの二人を責めることなんて出来ません。私のほうが、ずっと嘘をつき続けているのですから。……いくら隠していたって、化け物であることは、変わりないのに」
「それは違うと思います」
咄嗟に言い返してしまって、私は「すみません」と口元を抑える。
けれど、見過ごせなかった。
「私はただの人間ですが、マオさんも、つづみ商店の方々も、優しく気を配ってくださる方々ばかりです。それこそ私が元々勤めていた会社の上司よりも、身勝手に私を害そうとした、お客様よりも。……"人間"ではない、という意味で"化け物"とおっしゃるのでしたら、否定はできません。けれど少なくとも私には、マオさんたちの方が、沙雪さんの方が、心優しく素敵な方々です。正純さんも、沙雪さんが"人間"だから好いたのではないと思いますよ」
「…………」
「沙雪さん。沙雪さんは、これからどうされたいのですか?」
沙雪さんは顔を伏せて、力なく首をふる。
「……わかりません。夫に真実を訊ねる勇気はありませんし、けれどきっと、二人のことは、頭から離れないと……」
「明日、俺達が様子を見て来る」
「! マオさん」
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