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幸せでいるための嘘
「マオさん、子供の相手がお上手なんですね」
帰りの車内。高速道路の流れていく街灯をなんとなしに見遣りながら告げると、マオは「意外だったか?」と面白そうに訊ねてくる。
「いえ、どちらかといえばイメージ通りでした」
「なんだ、ギャップ萌え? ってやつでポイント上がったのかと思ったんだけどな。残念」
わざとらしく肩を落としてみせるマオに思わず笑みを零すと、彼は私を横目で確認して、頬を引きしめ前を向く。
「明日、俺だけで行ってもいいんだぞ。茉優はあの二人に付き添ってくれれば」
「いえ」
私は膝上で両手を握り込める。
「沙雪さんに事情を聞きたいと申し出たのは私です。最後まで、責任をもちたいんです」
真実を突き止めて、それが本当に沙雪さんや風斗くんのためになるのかは、わからない。
けれどこのままじゃ、沙雪さんはいつまでも今の状態から抜け出せない。
「気付かれなきゃよかったのにな」
「え……?」
「嘘をついているって。知られなければ、少なくともあの二人にとっては"ない"ものだった。知られてしまったから、無視のできない"事実"となってしまった」
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