尾行作戦、開始です

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尾行作戦、開始です

 うまれて初めての尾行作戦。  沙雪さんから教えてもらった会社の自動ドアが開閉するたびにスマホの写真と見比べながら、ターゲットである正純さんが出て来るのを待つ。  万が一、尾行中に怪しまれた時は恋人のふりをするのが一番だろうとマオが言うので、今日は衣裳部屋からネイビーのワンピースを借りてきた。  髪のセットとお化粧はタキさんが。例にもれず、マオは大げさなほど絶賛してくれた。  いまいち落ち着かないけれど、確かにこちらのほうが、街の景観に馴染む気がする。  帰りにデートしていくか! とうきうきしているマオを宥めるのに、少し苦労したけれど。 「正純さんではありませんでしたね……」 「まあ、のんびり待つとしよう。出て来てからが勝負なわけだからな、肝心な時に疲れていては判断が鈍ってしまう」 「そうですね……」  とはいえ帰宅時刻を過ぎた会社とあって、時間が経つにつれて出て来る社員が増えてくる。と、 「マオさん、あれ……っ!」  スマホと見比べる私に、マオが頷く。私も頷き返して、気付かれないよう、そっとその背を追いかけはじめた。
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