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幸い、帰宅中の人達に紛れることが出来たことで、顔を覚えられていない私達は簡単に尾行が出来た。
人波にのって、正純さんが賑わう品川駅に辿り着く。
刹那、駅へ繋がるアーケードからふと逸れた。きょろきょろと周囲を見渡して、片手を上げる。
女性がいた。応えるようにして片手を上げる、オレンジブラウンのセミロング。
仕事上がりのようで、パンツスタイルの恰好は写真でみたそれよりもオフィス街に馴染んでいる。
(菜々さんだ……!)
落ち合った二人は当然のようにして歩き出す。改札を通り過ぎ、アーケードを抜けると、線路に沿って歩を進め駅から離れていく。
無言のまま、緊張に騒ぐ心臓の音だけを感じながら、マオと並んで二人を追う。
二人は特に周囲を気にすることなく、楽し気に言葉を交わしながら路地に向かった。
そして当然のように、マンションに入っていく。
「茉優、こっちだ」
囁きながら、マオが私の腕をひく。
エントランス側とは反対の路地に出て、マンションの並ぶ窓々を見上げる。
「予想では、あの部屋だと思うんだが……」
マオが三階の一室を指さす。
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