雪女の告白

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雪女の告白

「茉優さん、マオさん……!」  タクシーから降りた沙織さんと風斗くんが、駆け足で向かってくる。 「すみません、急にお呼びだてをしてしまって」 「いえ、それで、その……」 「ママ、ここってどこ?」 「ここ、は……」  息を切らしながら言い淀む沙雪さん。  マオが風斗の頭を撫でて、しゃがみ込む。 「怖がることなんてないからな。パパに会いに行くだけだ」 「パパ……? ここにいるの?」 「ああ」  絶句する沙雪さんの肩を、私は咄嗟に支える。 (マオさん、どうして……!)  すっかり安心した様子の風斗くんの頭をぽんぽんとし、マオは立ち上がると、 「さ、行くぞ」  風斗くんの手を引いて歩き出したマオに、私達も、足取り重くついていく。 (やっぱり、あの部屋に菜々さんと正純さんがいたんだ)  けれど、どうして。どうしてわざわざ、沙雪さんと風斗くんを呼んだのだろう。  親の浮気現場なんて、子供にはショッキングな光景に違いない。  それは沙雪さんにとってもそうだし、なにより、これでは沙雪さんの意志を問わないまま、勝手に"壊す"選択だ。  家族なのは私達じゃない。  これからどうしたいか、決めるのは沙雪さんであるべきなのに。
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