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「マオさん」
軽快な足取りでエントランスへと入った、その名を呼ぶ。
怒りとか、困惑とか。静止の色が強い声にも、マオは「大丈夫」と笑むだけで。
インターホンに部屋番号を打ち込むと、ほどなくして、女性の声が響いた。
『はい』
「ほら、パパって呼んでみな」
「パパー?」
『! まって、まさか風斗なの!? なんで……!』
慌てふためく後ろで、「風斗!?」と男性の声。
『風斗、どうして……まって、一緒にいるのは誰!? ママは!? とにかく今すぐいくから絶対にそこを――』
「菜々」
発したのは沙雪さん。
インターホン越しの声がピタリとやんで、『……沙雪?』と返ってくる。
「うん、ママも一緒だよ。あと、おにいちゃんとおねえちゃん」
「……菜々。パパも、一緒なのよね。あけて……くれる?」
『……うん』
内部へと通じる自動ドアが開く。
四人で揃ってエレベーターに乗り込んだ。
「ここって菜々ちゃんのお家だったんだ」
「……そうよ」
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