雪女の告白

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 跳ねるようにして見遣った調理台の上には、剥かれたリンゴの皮と、生地を混ぜたのだろうボールに泡だて器。 「ママ……いや、沙雪! ほんっとうにごめん!」  正純さんが勢いよく土下座する。 「もうすぐ沙雪の誕生日だったろ? 毎年、俺達の誕生日は沙雪が美味いケーキを焼いてくれてさ、沙雪の誕生日も、自分で用意してたから……。今年は俺が、沙雪の好きなりんごのシフォンケーキを焼いたら、喜んでくれるかなと思って……。けれど家で練習するわけにもいかないからって、菜々さんに相談して練習してたんだ」 「私も! 私もごめんね沙雪!」  正純さんの隣に駆け寄った菜々さんが、同じく土下座をする。 「それならサプライズパーティーをしたらって提案しちゃったのは私なの! 今度の土曜、風斗くんと沙雪で買い出しに行ってもらって、その隙に正純さんがケーキを焼いて私が飾り付けをして……って。そしたら沙雪、びっくりしながらも、喜んでくれるんじゃないかなって……」  けど、と。  菜々さんは頭を下げたまま続ける。
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