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「そうだよ、いくら仲が良いって言ったって、私は家族じゃないし、正純さんとは男と女だもんね。私、すっかり抜けてて……! もしかしたらって思うのが普通じゃんね。あーもう、なんでそんな単純なこと気が付かなかったのかな!」
「俺だってそうだ! 沙雪が気がついたらなんて、一ミリも考えないで……! 心のどこかで、菜々さんとなら平気だって思ってたんだ。沙雪を喜ばせようって思ってたくせに、こんな、悲しませることになって……! 本当にすまん!!」
しん、と室内を静寂が支配する。ジーっと低い、オーブンの音。
風斗くんは戸惑うようにして三人を見ていたけれど、尋常じゃない空気を察してか、黙ったままでいた。
視線の合ったマオが手で招いて、側に呼び寄せる。
沙雪さんが土下座を続ける二人から視線を外し、室内を見渡す。
香ばしくも甘酸っぱい、りんごの香り。
「……パパ、ううん、正純さん。あの林檎、正純さんが剥いたの? あんなに包丁を怖がっていたのに」
「あ……うん、全然、上手には剥けないけど。もったいないくらい皮も厚いし。けど、ケーキにしたら、形の悪さは分からないかなって」
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