150人が本棚に入れています
本棚に追加
(タキさんはああ言ってくれるけど、ちゃんとわきまえておかないと)
優しくしてくれるのは、マオが私を"ねね"として好いてくれているから。
(どうして私は、記憶が残らなかったのだろう)
ほんの僅かでも覚えていれば、こんな風に悩むことなく、マオの……ここの皆さんの優しさを、素直に受け取れていただろうに。
(ううん、違った)
マオと別れた最期の瞬間だけは、覚えているのだった。
数え切れないほど繰り返していたのに、マオと出会ってから、すっぱりと見なくなった"夢"。
(どうして、よりによって)
"ねね"の、忠告だったのかもしれない。
自分の愛した人が愛しているのは、"ねね"なのだと。
忘れないように。奪われないように。
(同じ魂のはずなのに、同じ人になれないなんて、不思議)
マオがあれだけ心酔する、女性。
"ねね"はきっと、全てにおいて魅力あふれる女性だったに違いない。
平々凡々で特出すべきことなどない、私とは違って。
「……自信、かあ」
タキさんの言葉を思い出す。
なにか……たったひとつでいい。ひとつでも"自信"が持てれば、変わるのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!