猫又様と離れで同居です

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(タキさんはああ言ってくれるけど、ちゃんとわきまえておかないと)  優しくしてくれるのは、マオが私を"ねね"として好いてくれているから。 (どうして私は、記憶が残らなかったのだろう)  ほんの僅かでも覚えていれば、こんな風に悩むことなく、マオの……ここの皆さんの優しさを、素直に受け取れていただろうに。 (ううん、違った)  マオと別れた最期の瞬間だけは、覚えているのだった。  数え切れないほど繰り返していたのに、マオと出会ってから、すっぱりと見なくなった"夢"。 (どうして、よりによって)  "ねね"の、忠告だったのかもしれない。  自分の愛した人が愛しているのは、"ねね"なのだと。  忘れないように。奪われないように。 (同じ魂のはずなのに、同じ人になれないなんて、不思議)  マオがあれだけ心酔する、女性。  "ねね"はきっと、全てにおいて魅力あふれる女性だったに違いない。  平々凡々で特出すべきことなどない、私とは違って。 「……自信、かあ」  タキさんの言葉を思い出す。  なにか……たったひとつでいい。ひとつでも"自信"が持てれば、変わるのだろうか。
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