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(けど)
優しい人も、可愛い人も。慈悲深い人だって、たくさん出会ってきた。
けして自分が彼らと同等だなんて思えない。私が、誰かに勝っているものなどない。
なのにどうやって。この身にある"普通"を、"自信"に変えたらいいのだろう。
「茉優ー? 邪魔していいかー?」
玄関から届いて声に、はっと思考を切る。
マオの声だ。気付けば一階の畳は拭き終えている。考えながらのほうが捗る性質だ。
私は急いでバケツに雑巾を入れて、玄関まで小走りで向かう。
なんだがドサドサと、重い荷物を置く音がするような……?
「いやあ、遅くなって悪かったな、茉優。ひとまず今日の仕事は済んだから、この後は俺も動けるぞ」
和服ではない、よく見るカジュアルな服装のマオの周囲には、雑多に詰められた箱やら大きなショルダーバッグが置かれている。
「お仕事で使ったものですか? 私も運びます」
もしかしたら、この広すぎる離れを私の居候場所兼、仕事の物置に活用することになったのかもしれない。
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