前世の記憶がないので嫁にはなりません

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「そういえば、この後の予定は大丈夫だったか? つっても、嫁を迎えにいくって出てきちまったから、今日は一緒に来てもらわないとにはなっちまうんだけど。悪いな、やっと会えたってのに慌ただしくて。俺もなあ、やっとの再会を今すぐにでももっと実感したいんだけれどなあ。そうにもいかなくって。ああ、帰りの心配はいらないからな。今夜は泊まっていけばいい。そんで、今後についてはゆっくり話し合って……」 「ちょ、ちょっと待ってください」  楽し気にころころと話される内容に、慌てて待ったをかける。  どうかしたか? と小首を傾げてみせた彼に、私は自分がおかしいような錯覚を覚えながら、 「助けていただいたことには感謝しています。ですが、"俺の嫁"、"俺の嫁"って……。私はあなたの嫁になった覚えはありませんし、そもそも初対面ですよね? 大変言いにくいことなのですが、おそらく人違いをされているのではないかと……」 「…………ま、さか」  魂が抜けたかのごとく呆然とした表情で、彼が私を見つめる。  とはいえ今は絶賛運転中で。 「あの! 前! 前見てください……っ」 「あ、ああ、すまん」
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