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「そんなにふわふわなのに、膨張剤はなしの卵の力だけらしいぞ。種類も全部で三十くらいあってな。けれど店に並んでるのは六種類くらいだから、なにがあるかは行ってのお楽しみってやつなんだ」
「三十……! シフォンケーキって、そんなに種類を作れるものなんですね」
「凄いよなあ。今日はなかったが、俺はラムレーズンが一番の気に入りだ」
(ラムレーズン。シフォンケーキで出来るんだ)
好奇心に心が疼く。食べかけで行儀が悪いとは思いつつ、今度はロイヤルミルクティーをひとくち。
優しい紅茶の香りが、ほわりと鼻を抜ける。こちらも美味しい。
「よかったら俺のも食べてみるか?」
「え? いえ、そちらはマオさんのですし」
「なに、ひと欠けずつだ。他の味もどんなもんか、試してみたくはならないか?」
「…………」
正直、とても気になる。
マオのお皿に乗る二種類はまた違った味がするのだろうし、マオの話だと、仮に私が買いに行ってみたとしても、同じ味があるとは限らないようだし。
「……少しだけ、頂いてもよろしいでしょうか」
「ああ、もちろんだ」
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