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マオが手付かずだったチョコレートシフォンの端を、フォークで切り取る。
先に刺して、自然と伸ばされた腕。
「ん」
「……ん?」
にこにこと好青年顔で笑みながら、マオは私にフォークに刺さったシフォンケーキを差し出し「味見」という。
いや、いやいやいや。
これじゃまるで、"あーん"なのですが?
「マ、マオさん。その切れ端を私のお皿に置いていただければ自分で……」
「ん? なにか不都合があったか? 親父や朱角もよく味見だ腹が減っただと言って、こうやって食べるんだが」
「……んん?」
「そういえばタキにもよくやってたなあ。もしかして、何かまずい行為だったのか? これ」
(え、もしかしてあやかし……というかこの家では、至って普通のことだったり?)
家族だから……とか?
思えばたしかに私も、おばあちゃんからこうやって貰っていたし。
(私は家族ではなく部外者なのでって言っても、マオのことだから、もう家族だろ! て全力の善意で言いそうだし)
マオにとっては"普通"の行為。
過剰に反応しているのは、私だけってことなら。
「そ、それじゃあ……失礼します」
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