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「でしょ? 藤といえど色は別。けれど紫には紫の、白には白の。そしてどちらにも"藤"としての良さがあるというもの。違うけれど同じ。同じだけれど、違う。どちらも美しいものだね」
(違うけれど同じ。同じだけれど、違う……?)
それって、まるで――。
「気に入ってくれたのなら、良かった。ウチは白藤しかないからね。紫の藤が見たければ、鎌倉のあちこちで見られるけれど……そうだね、まずは鶴岡八幡宮なんてどうかな。鎌倉といったらな場所だし、ちょうど今が見ごろだよ。なんなら散歩がてら一緒に」
「用事が済んだのなら戻ったらどうだ、親父」
「マオさん」
私の背後ろから覗き込むようにして、窓枠に手をかけたマオさんが。
「俺達が休憩中だってわかってるんだろ? 紅茶が冷めちまう……って、まてまてなんで座るんだよ!?」
「いやあ、ひと休みしようかなって」
「あ、お茶、お持ちしますね」
「茉優!? 平気だ親父はすぐに本邸に戻るから……!」
「うんうん、我が息子ながらなんとも心が狭いねえ」
「いやなんでちょっと嬉しそうに言うんだよ」
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