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「ついでだから私にもあのシフォンケーキ、ひとくちくれないかな? 私にはよくやっているのだから、別に構わないよね?」
「な!? 親父、いったいどこから聞いて……っ! って、やらないからな。親父のぶんは本邸に置いてあるから、そっちでゆうーーっくり堪能してきてくれ!」
「清々しいほど抜かりないねえ。面白くないじゃないか」
「俺は親父に面白さを提供する気なんざ、さらさらないんだが」
ほら、戻った戻ったと急かすマオに、「仕方ないなあ」と腰を上げる狸絆さん。
それから「ああ、そうだ。渡すものといえば」と襟元に手を入れ、
「これを茉優さんに渡そうと思ってたんだった。頼まれていてね」
差し出された写真に、思わず息をのむ。
「沙雪さんたちの写真、ですか」
受け取って確認する。
笑顔で顔を寄せあう風斗くん正純さん、そして菜々さんに、沙雪さん。沙雪さんの手には、カットされたシフォンケーキの乗るお皿が。
「りんごのシフォンケーキ……」
あの日、正純さんが焼いていた、沙雪さんへのプレゼント。
と、狸絆さんが指を円を書くように動かした。
(裏面……?)
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