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当のマオはすっかりいつもの様相で、
「ほら、これで終いだろ。いい加減、大事な二人の時間を邪魔しないでくれ」
「お前はこれから共に住むのだからいいだろう? 茉優さん、たまにとは言わずいくらでも本邸に出入りしていいからね。そうだ、今夜の夕食はもう決まっているのかな? よかったら一緒に……」
「か・え・れ!」
ぴしゃんと勢いよく閉じられた窓。
驚いて固まる私とは対照的に、狸絆さんは笑顔のまま手を振って本邸に戻っていった。
「ったく、悪いな茉優。親父のやつ、未だに浮かれているみたいで、面倒くささに拍車がかかっちまってて……」
「いえ。親子仲が良いのは、素敵なことだと思います」
席に戻った私達は、再びシフォンケーキと紅茶に手をつけはじめる。
シフォンケーキ。汚れない位置に置いた写真の中で、沙雪さんの持つそれに目がいく。
包丁に慣れない正純さんが、沙雪さんのためにと、何度も練習して作った特別なケーキ。
苦手だと。自覚していることでも、大好きな人のためならば頑張ってみようと。
夫婦ならば、そう、思えるのだろうか。
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