猫又様と離れで同居です

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「先日お話した通り、私の両親は七歳の時に亡くなりました。それからは、祖母が育ててくれて。だからなのか、"夫婦"という存在をよく知らないんです。知識とはしてはあります。生きていくうえで、"夫婦"はどこにでも存在しますから。だけど私にとって"夫婦"は、あの日帰ってきてくれなかった"お父さんとお母さん"で、何年歳を重ねようと、私はどうしても"子供"のままなんです。自分が誰かと"夫婦"に、"お父さんとお母さん"の位置になるなんて、考えもしませんでした」  身体は、社会的立場はすっかり大人だというのに。  心の奥底ではまだ、あの時のままの私が二人の帰りを待ち続けている。  もう、二人と過ごした記憶さえ、朧気なのに。 「今回、沙雪さんたち家族と関わらせていただいて、少し"夫婦"という存在を羨ましく思いました。行き違いはありましたが、ああやって互いにその存在を慈しみ合えたなら、きっと、心強いんだろうなと」 (マオはきっと、"ねね"とそうであったのだろうけれど)  その言葉は飲み込んで、私は「だから」とマオを見据え、
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