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部屋の扉に立つ玄影さんが、「すみません、いつもはこの時間に僕が片付けていたので」と苦笑を浮かべる。
「今日は私達がいますので、くつろいでもらっていて平気ですよ」
けれども玄影さんは首を振って、「僕のことはお気になさらず」とその場をキープ。
(変なことをしないよう、里香さんに見張りを頼まれているのかな)
確かにいくら家政婦派遣サービスとはいえ、自身が不在とあっては心配も多いだろうし。
納得の心地で頷いた私は、手にした缶ビールに視線を戻し、
「これ、使わせていただきますね」
「使う? 昨夜の飲み残しですよ」
「はい、だからこそ捨てる前に有効活用させてもらいます」
ほう、と興味深げな声を出して近寄ってきた玄影さんを把握しつつ、折り畳んだキッチンペーパーに残ったビールを沁み込ませる。
「ビールに含まれている成分って、油汚れに強いんです。なので、コンロ周りの掃除にすごく向いていて……」
コンロについた汚れにビールを沁み込ませるようにペーパーを押し当てて、暫くしたら拭き取る。と、するりと汚れが消え去った。
他の部分も同じようにして、時折面を変えながら拭きあげていく。
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